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#twnovel

12


●夜空の星雲を選りすぐり、オーナメントを創る季節。無骨な手から生まれた煌めきが、ツリーを少しずつ彩っていく。見つめる貴方は地上のひとに、夢と幸福を届ける職人。クリスマスの足音が聞こえる頃、あたしはその日に嫉妬する。年に一度、あたしをちらとも見てくれない季節に。

●明朝体の「私」を書いて、生身のわたしを仮託した。騙る言葉は御伽話。口ずさむのは歌い手の幻想。形ないものと軽んじるならご自由に。嘘にひとひらの真を混ぜて、娯楽を繕うが道化師の性。お読みください、活字の張りぼて。紡ぐ世界のどこかの隅で、「私」がわたしを呟いている。

●長い間お待ちいたしておりました。彩りの春も情熱の夏も、実りの秋さえ白黒に沈んで思われました。ようやくお目にかかれて夢のよう。白い吹雪はささやかながら、わたくしからの捧げ物。今年も凍てつく氷の冬に、長くお傍に置いてくださいますよう――愛しの冬将軍閣下。

●鏡の中で、耳許の銀色が煌めいた。ロングピアスは不釣り合いだと言われようとも気にしない。喪服が死者の制服ならば、ピアスとヒールは戦闘装備。理論正論に我が身を固め、仕上げに加えるスパイスだ。待っていなさい、彷徨える魂諸氏。一人残らず在るべき場所へお還ししましょう。

●「相手が悪い、とは思わないのですか」短い問いも聞こえていないのか、椎名は刀を構えたまま動かない。いつもとは微妙に意味の違う無表情の上で、獣の眼がぎらついている。抗う自我も「衝動」に喰われたか――致し方あるまい。ゆるりと銀の銃口を向けたとき、相手は確かに、嗤った。

●弦の調べに恋い焦がれ、木々の間を分け入った。木漏れ日に乗った微風の音に、いつしか応えて詩を歌う。呼び声に応えてからかうように、澄んだ音色が迷子の詩人を誘い出す。惹かれるままに最後の枝を掻きわけると、弾き手はしゃらりと竪琴で微笑んだ。ようこそ、――へ。

●誕生日は始まり――澄ました言葉と小さな包みを受け取った。銀のリボンを解くと、洒落た装丁が顔を出す。読書なんて柄じゃないって、ようく知っているくせに。読むんじゃなくて書くほうよ。表紙を開く手の中に、綺麗な白紙が行儀良く並ぶ。物語は始まらず、まだ名も持たない君と僕。

●「あなたはどこへ還るのかしら」迷い竜の首筋を撫で、封魔師はふと問いかけた。淋しげに喉が鳴る。これまで封じた魔の者と、街を彷徨う翼竜と、違いはどこにあるのだろう。還る場所を持つことに、たぶん変わりはないのだろうに。飛び立つ迷子を見送りながら、文明を築いた業を思う。

●コーヒーを淹れテキストを開く。魔術理論の次の章は難所だ。万年筆片手に思案していると、「先生」常連組だ。授業準備もさせてくれないとはありがたい。「いま良いですか」「ええ。でも私は正論しか言わないよ、学問に王道なしってね」近道を期待する教え子は、三人同時に苦笑した。

●扉を開けると彼女が泣きながら刃物を振るっていた。「嫌いなのに、大嫌いなのに、切れば切るほど泣けてくる……もう消えてなくなれば良いのに……」呪詛を聞き流しながら黙ってコートを脱ぎ、荷物を片づける。「カレー作るくらいで大袈裟だな」なにしろ彼女は大の玉葱嫌いなのだ。


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