囁かれたのです。 だからそれに従っただけ。 だってそうでしょう、指示されたら従うのが当たり前じゃないですか。前に だから私、彼がそうしてほしいと思ってるんだなって解ったんです。彼が望むことならなんでもしますよ、もちろん。だって、そうしないとまた怒られてしまいますから。たぶん今までちゃんとできてなかったんですよね。だから、今日こそは、できるだけ早くしなきゃって思ったんです。 声が聞こえて、顔を上げてみたら、テレビを見ている彼の後姿が見えました。え? そんな、全然。彼がこっちを見ずに話すなんていつものことです。 思えば、ときどきなにか耳許で言われている気はしていたんです。 でもなにを言っているのかさっぱり解らなくて。遠かったり、もやもやしていたり。もしかしたら、それをちゃんと聞けていなかったから、怒ってたのかもしれないですね。私、駄目なんですよ、本当に。 ピアス? ああ、これですか。そうです、彼がくれた唯一のプレゼント。可愛いでしょう。この子ですよ。ずっと言ってくれてたのは。彼がどうしてほしいのか、きっとずっと私に伝えつづけてくれてたんですよね。 やっと聞きとれたんです。 そうですね……ええ、もしかしたら、彼じゃなくて私の声だったのかも。でもそんなこと、どうだって良いじゃないですか。だって喋っていたのは、彼がくれたピアスなんですから。同じことですよ。 そう、――やっちまえ、って。 すぐ、やりましたよ。 だって嬉しかったんですもの。 |