――消灯させて頂きます。 そんな一言も、眼を閉じたまま聞き流す。シートの中でしきりと寝返りを打っていうちに、瞼に透けていた灯りが消えた。これで少しは寝やすくなるだろうか。 窓側を向いて ――安いバスだしな。 仕方がない。予約したのが遅かったのが悪かったのだ。隣のシートが空いているだけまだ救いがある。そもそも、夜行バスに快適な寝心地を求めるほうが間違っているというものだ。 頭の向きをまた変える。傾けなどしてみる。 あれこれと動かしているうちに、不意に――視界が傾いだ。ゆっくりと上下が反転した。三半規管が落下を告げている。 視線だけで見上げると、シートにはわたしが座っていた。但し首が綺麗に外れていた。 ――ああ、これはこれでよく眠れそうだ。 暗い通路に転がりながら、わたしは穏やかに眼を閉じた。 |