星間距離

幕間


 怯えないで、怖がらないで。
 もともとが、死人だなんて非常識な存在なんだもの。あなたがあたしであたしがあなた、そんな馬鹿みたいな事態になったって、器と中身がこんがらがってしまったって、別に今更驚くまでもないでしょう? 存在してること自体が、まずおかしいんだから。そう思わない?
 警戒してる?
 仕方ないのかな。でもね、器の奪いあいなんて興味ないの。これは本当。信じて頂戴。
 居ないのに居る、だなんて、ただでさえわけの解らない状況なのに、輪をかけて非常識な存在のしかたをしている。なんでだろ、って思ったことも、もちろんある。あるどころじゃないわ。もうしょっちゅう。なんであたしだけが、こんな裏側に隠れなきゃいけないの、ってね。
 でもね、これはこれで、慣れちゃった。住めば都っていうのかしら。まあ一人ぼっちで退屈なのは確かだけど、関わりあう人が居ない分、面倒がないのは楽だしね。
 だからあたしの関心は、直接触れあえるあなたの心ひとつだけ。干渉する気も取って代わる気もない。あなたの眼を通して、ただ眺めてるだけが好きなの。あなたがどう感じるかを観察してるのが好き。悪趣味かしら? 悪く思わないでね。こればっかりはしょうがないもの。ただまあさすがに、意識的に聞かないようにすることはあるけどね。解るわよ。さすがにプライバシーとかは考えるしね。耳ぐらい塞げるわ。持ってないけど。
 あたしは今の状態、意外と好きよ。
 あなたがどう思うかはわからないけれど。
 ただ、そうね。しいて言うのなら。あたしがここに居るってこと、あなたに知っておいてほしいなって、そう思うのよ。もし可能なら、こんな状態だけど仲良くしてね、って言いたい。
 どうかしら。あたしのこと、どう思う?
 できれば、あたしの名前、呼んでほしいのだけれど。


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